先日の続きで執筆の仕上げに入っているピクチャーBOOK「青いイルカと泳いだ日」からの抜粋です。
1993年から北米シアトルでNINTENDO関係の攻略本レイアウトを数年間手掛けていました。
この時期に3Dソフトウェアを使ってイラストを作ることもあったのですが、その頃の3Dソフトは今よりも遥かに難度が高く、本格的に使いこなしていたわけではありませんでした。
近頃は3Dソフトそのものが以前より進化して使いやすくなっているので、数年前から暇な時にいじって遊んでいたのです。
それに新しいソフトは実際に入り込んで学ばなければ使えるようにならないので、これを機に思い切って挑戦してみることにしました。
3Dで頭の中にあるキャラクターのイメージを表現してみようと試行錯誤を繰り返し、実験的なレンダリングに挑戦した結果、なんとかなりそうに思えたので本格的にキャラクター・デザインに入ってみました。
キャラクターデザインの中で最も難しかったのが〝顔〟と照明です。
デジタルに構築された空間は、どのように照明が入るかでガラリとイメージが変わってしまう。光りがオーバー気味でも、暗過ぎでもNGになるし、光の具合で質感も大幅に変わってしまう。
3Dの難しさはモデリングとプロップや背景のプロダクションだけではなく、カメラワークからライテイングまで関係する映画の世界に近いということが良くわりました。
「ブルードルフィン」はもともと映像的な小説として書いた作品ですから、映画的なフレームの3Dイラストに落ち着いたのにも意味があったのだと思います。
キャラクターデザインは予めソフトウェアの中に入っている人物モデルの顔と身体を好きなように改造するのですが、身体の方に難しさは感じませんでしたが、〝顔〟の制作に苦労しました。
一人のキャラクターの顔を作り出すのに一体どれくらいの顔の造作に挑戦したことか。
それぞれの顔を作る手始めとして、映画俳優の様々な角度の顔写真を集めて参考に制作し始めてみましたが、想像していたより遥かに難しく、なかなか思ったようなイメージの顔に近づかないのです。
想像以上に困難で、下手に誰かに似せようとする方が余計に難しいと思いました。
色々といじっていたら、意図しない顔ができあがってしまったり、横から見たらトムクルーズなのに正面から見たら別の人。
下から見上げたらブラッドピッドに似ているのに、普通に捉えたら別人という具合が続きました。
例えば、トムクルーズの顔写真を見ながら平面の紙にデッサンしてリアルに描き出すのは私にとって難しいことではありません。
しかし3Dとなると全く別次元で、こちらの方が遥かに難しいのです。
そこで俳優に似せるのではなく、再び頭の中の世界に戻って、それぞれの顔を彫り出しながら立体化すことに専念しました。
3Dは平面の紙の上にデッザンするのとは違い、360度の立体ですから、イラストで描くというよりは、彫刻に近いものです。
実際の彫刻はノミで掘り起こすのですが、コンピューター上で土台の石に触って、眺めながら削ったり、粘土のように少しずつ加えて形にしていく作業とは全く違った方法です。
土台となるアンドロイドのような個性がまったくない基本の顔から始め、眼の位置や形、大きさを整え、鼻筋を調節し、高さや形を変え、口の位置を決めて、唇の厚さから幅、眉毛の高さ、頰の張り出し具合や、顎の形、それに肌の色を変えたりと、多角的に調整し続けるのです。
そして頭の中にあるイメージに近い顔が現れるまで延々と作業を続けました。
それらの行程の中で気づいたのは、頭の中のイメージというのは、自分で思っているより抽象的+柔軟性が高いもので、この経験は自分でも興味深いものがありました。
実際に立体的な角度で各キャラクターの顔や身体が具体化されていく段階で、少しずつ光が当たって明確になり、立体化していきます。
しかし何とか自分なりのキャラクターのイメージに近い出来具合になった時には、始めた時とはかなり趣の違う顔で現れるのです。
三人の主人公達は制作を始める前から明確なイメージ+雰囲気があり、試行錯誤はしましたが比較的速く形になりました。
サブキャラクター達の顔や体型は元々から具体的なイメージというよりは雰囲気の方が遥かに強く、固執した顔のイメージもなく、また執着も少なかったので苦戦はしませんでした。
キャラクターの中で最も挑戦的だったのは、主人公の対になる愛人達です。
ブルードルフィンという小説は、性転換して女性になったCOCOをのぞいて、ホボ男しか登場しないという変わった作品です。
そんな背景なので男のヴァリエーションが必要で、同じようなイメージの男の顔は並べられない。
それに綺麗で美しく整った顔ばかりでも現実感がなくなってしまうし、個人的にファッションモデル的に美しすぎる顔は好きではないので、個性的な味のある顔にしたいと思いました。
しかし下手にいじりすぎると現実的な雰囲気を離れて人間離れした漫画的な顔になってしまうし、3Dソフトの同じ基本顔からの発展なので似たような面になりやすい・・・。
手掛け始めた頃は実験段階的な試行錯誤の多い状態でしたが、次第に3Dソフトの使い方にもなれ、少しずつ要領がわかりはじめて上手くなっていきました。
そして3Dで顔を作りだし、身体の肉付きを彫り、キャラクター達が個性を持ち始めるようになると、まずはそれぞれの登場人物のイメージ制作に挑戦しました。
顔や身体の作りだけでなく、それぞれの個性にあった服を着せ、ポーズをとらせてイメージSHOTをレンダリングし始めました。
そこで満足していたらよかったのですが、全く飽き足らず、さらに先に進んで、小説という世界をもっと具体的なイメージとして作り出してみたいと思うようになったのです。
それから人物像だけでなく、プロップと背景を加え、シーンを形にし始めたのです。
そこから文字だけで書かれていた小説世界が立体的になりました。
これから3D次元に生まれた登場人物達と一緒に、小説「ブルードルフィン」の世界とその裏側をご案内します。
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